sugary

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二十代後半鰐と交流の広くなっていくメルニキ


・クロコダイルの誕生日


「誕生日プレゼント、なにが欲しい?」

「誕生日前日に暇潰しに天竜人殺してはしゃがないアニキ」

そう返さなかった自分を褒めたい。いや貶したい。

数年ぶりに会いに来たアニキは誰かに余計な事を吹き込まれて誕生日パーティーというイベントを知ったらしい。余計な事を誰が教えたのかこんなアニキにそれを説明できるならもっとマシな常識を教えてやれば良いものを。

「自分が産まれた日にケーキが食べれる。──幸せだね」

キャラメルシフォン、モンブラン、フルーツタルト、ガトーショコラ、レアチーズケーキ。様々な種類のホールケーキを並べて好きなだけ食べて! と、目を輝かせるのを見るだけで胸が焼けそうだった。ケーキの匂いがそれを更に増長させる。

「甘さは」

「どれも同じくらいだよ」

だろうな。

余ったのは兄の胃の中に入るのを想像するだけで吐き気がするこいつの体菓子と紅茶でできてるだろ。

諦めて一番近くに置かれたショートケーキに手を出して苺にフォークを突き刺すクソが苺に苺ソースかけんな。

紅茶にマシュマロを入れようとするアニキからカップを奪うと一口食べて──

「どう?甘すぎたりしない?」

しなかった。見た目はソースがけの大粒の苺がひしめいた白より赤面積の多いケーキなのにスポンジもクリームも甘ったるくないのだ。一口二口食べ進めてもそれは変わらずこれならホールケーキ1つ分…は無理だが半分は食べれるかもしれない。全種類味見くらいだろうか。

「店のか?」

「作った」

「つ、作った? これ全部か?」

「だってクロの初めての誕生日パーティーだしね」

何が楽しいのか自分の紅茶にマシュマロをミルクで沈めながら笑うアニキに、ケーキを切る手が止まる。

「……一人でか?」

「一人は無理だよ。最近できた友人の家族が甘い物に詳しくてね。半年前に新聞に記事が載ったでしょう。あれに少し手を貸してそのお返しとして今回手伝って貰ったんだよこの小さい飴細工だけはペロスペロー一人で作ったやつでそれ以外はアドバイスと試食繰り返して完成させたんだよやっぱりお菓子作るの手間がかかるね後片付けもしようとしたんだけど『お前はこれ以上道具に触るな』て言われちゃった見かけによらず親切だね」

相変わらず立て板に水を流すように喋り続けるアニキに鰐の形の飴細工をケーキから取って突き出すと反射的に口に含んで舐める。

「──美味しい。流石だね。それで、どうクロ?口に合う?」

「食べれるけど、甘みが足りねェ。試食したのってアニキじゃないんだろ?」

「私は甘い方が好きだからね。ペロスペローの弟妹の何人かに頼んだけど」

「結局そいつ等基準になるからな」

「美味しくなかった?」

「まぁ……美味い……一応。今度からおれが試食するからこっちで作れ。他所に迷惑かけんじゃねェ」

「美味しい?良かった!」

「聞けよ」

はしゃぐアニキに呆れながらミルクレープの皿を引き寄せる。

一年に一度強制的にアニキに会わなければならないのは疲れるがまあ我慢しようか。




「プレゼント決まった?」

「1日大人しくしてるアニキ」

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